憲法なんて関係ねえ?平和・憲法
(『毎日新聞』4月22日付)
これは本音なのだろうか?イラク派遣自衛隊の多国籍軍空輸を違憲とした名古屋高裁判決について、空自のトップ、田母神俊雄・航空幕僚長は記者会見で「『そんなの関係ねえ』という状況だ」と現地隊員の心境を代弁してみせた。
サマワ派遣の陸自現地隊長だった佐藤正久自民党参院議員も、近くのオランダ軍が攻撃されたら、その場に駆けつけて正当防衛の状況を作り、戦闘に参加するつもりだったとの発言をしている。
名古屋訴訟原告団の抗議文ではないが、「憲法なんて関係ねえ」が、自衛隊幹部の本音なのかと心配になる。
自衛官には憲法順守義務がある。その憲法9条にある戦争放棄は、米軍の無差別爆撃で多くの民間人が犠牲になり、日本軍が侵攻先のアジアの国々で多くの民間人の命も奪った太平洋戦争の重い経験ゆえに、国民が変えずにきたものだ。
イラクの民間人犠牲者は8万2987人以上とNGO「イラク・ボディー・カウント」のホームページは伝えている。こうした犠牲の一部が空自が復興支援で運んだ兵士や武器により生み出されているとしたら、やりきれない。
(『毎日新聞』4月17日付)
イラクへの自衛隊派遣は違憲だとして、市民団体などが国に派遣差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であった。青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は原告の請求を却下するなどした1審・名古屋地裁判決を支持し、控訴を棄却したが、「航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動は憲法9条に違反している」との判断を示した。
全国で行われている同種の訴訟で空自の活動の一部を違憲と認定したのは初めて。原告団は「控訴は棄却されたが、違憲の司法判断が示された」として上告しない方針で、勝訴した国は上告できないため判決が確定する。
青山裁判長は判決で「イラクでは、多国籍軍と国内の武装勢力の間で国際的な武力紛争が行われ、特に首都バグダッドは多数の犠牲者が出ている地域でイラク復興特別措置法でいう『戦闘地域』に該当する」と認定。多国籍軍の兵士をクウェートからバグダッドへ空輸する空自の活動について「戦闘行為に必要不可欠な後方支援を行っており、他国による武力行使と一体化した行動」と述べ、武力行使を禁止した憲法9条1項とイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反すると判断した。
また原告は派遣により平和的生存権が侵害されると訴えていたが、判決は平和的生存権を「憲法上の法的な権利」と認定。「戦争への協力の強制など憲法9条に違反する国の行為により個人の生命が侵害されるような場合には、裁判所に違憲行為の差し止めを請求するなどの具体的権利性がある」と判断した。
そのうえで、今回の原告の請求については「戦争への協力を強制されるまでの事態が生じているとは言えない」などとして控訴を全面的に棄却した。
同訴訟原告団は04~06年、自衛隊の派遣差し止めと違憲確認、原告1人当たり1万円の損害賠償を求め、7次に分かれて計3268人が集団提訴し、うち1122人が控訴していた。原告団によると、自衛隊のイラク派遣を巡り、全国の11地裁で提訴されているが、判決はいずれも原告側の訴えを退けている。【秋山信一】
▽弁護団長の内河恵一弁護士の話 ようやく勝ち取った違憲判決。裁判所がしっかりした考えを出してくれたことを法律家として誇りに思う。
▽防衛省の話 判決文の細部を確認中で、現時点ではコメントできない。
福田康夫首相は17日夜、航空自衛隊のイラク派遣を違憲と認定した名古屋高裁判決について「傍論だ。判決は国が勝った」と述べた。今後の影響については「問題ない。特別どうこうすることはない」と語った。【木下訓明】
(『毎日新聞』4月21日付)
鳩山邦夫法相は20日、地元の福岡県久留米市であった陸上自衛隊幹部候補生学校の開校54周年記念式典で、名古屋高裁の自衛隊イラク派遣一部違憲判決について、「傍論に過ぎない」と述べた。
来賓の祝辞の中で、鳩山法相は「一般論」としたうえで、「(判決は)国の完全勝訴であります。違憲うんぬんは(原告側の)請求を退ける判断とは別の、わきの傍論として述べられているに過ぎないというのが私の判断」と話した。発言後、鳩山法相は取材に対し「(傍論の表現は)総理も官房長官も使っている」と説明した。
一方、社民党の福島瑞穂党首は20日、熊本県水俣市で会見し、同判決について田母神俊雄・航空幕僚長が「『そんなの関係ねえ』という状況だ」と述べたことについて「発言に強く抗議する。自衛隊は法の支配に服する気があるのか危惧(きぐ)する」と述べた。
福島党首は「幕僚長の発言は傲岸不遜(ごうがんふそん)。司法権が違憲と言った画期的な判決に対し、聞く耳を持たないのは問題だ」と批判した。【松尾雅也、西貴晴】
(『しんぶん赤旗』4月19日付)
日本共産党の赤嶺政賢議員は18日の衆院外務委員会で、名古屋高裁の判決(17日)が航空自衛隊のイラクでの空輸活動について、憲法違反と判断を下したことを示し、「政府は、この司法判断に従い、自衛隊をイラクから撤退させるべきだ」と求めました。
高村正彦外相は、違憲との司法判断について「納得できるものではない」と主張。違憲判断部分は「(判決のなかの)傍論だ」と述べ、あくまで派兵を継続する考えを示しました。
しかし判決は、イラクの現状について「国際的な武力紛争が行われている」とし、バグダッドについても「イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」と認定。空自による多国籍軍兵員のバグダッドへの空輸について「他国による武力行使と一体化した行動」だとしています。
赤嶺氏は、これらを示し、「『傍論だ』といって片付けるわけにはいかない。明確な違憲判断であり、政府は尊重すべきだ」と、重ねて自衛隊の撤退を求めました。
宇治久世教組コメント
宇治久世教職員組合は「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンのもと、憲法改悪阻止、自衛隊海外派兵反対を一貫して訴えてきました。
日本国憲法前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、戦争と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と明記され、その第9条1項で戦争・武力行使の放棄を、また2項で戦力の不保持を謳っています。
憲法は言うまでもなく最高の法規であり、それに逸脱する法律や行為に対し、司法が「違憲である」との判断を下したことに対し、自衛隊や政府の幹部が「関係ねえ」と開き直ってただですまされるものではありません。
宇治久世教組は政府がすみやかに違憲状態をただし、自衛隊をイラクから撤退させると同時に、憲法軽視の発言を撤回するよう求めるものです。